三歌齋經を使用する時の注意

大齋の祈祷を三歌齋經に沿ってきちんと行おうとすることはかなり難しいです。指定された箇所の日本語訳が無いということも多いのでその通りにはできないと言って良いです。以下、その説明と対応例になります。

★正教会の公祈祷は複数の祈祷書を組み合わせて使用します。「日毎」「週毎」「年事」というように繰り返すサイクルが異なるので「ずっと使える一冊の祈祷書」は造ることができません。
どのようなサイクルに従って用いるかという点で、各祈祷書を次の4区分に分けることができます。(よく聖堂で用いられている「主日奉事式」や「単音聖歌譜聖体礼儀」、「大齋第一週間奉事式略」などは省略することであまり変化が無いように作られたもので、下の区分には入りません)

Bのサイクルで一つの調は土曜日の暮から始まり次の土曜日の暮まで。八まで行ったら一に戻ります。ですので、例えば(聖神降臨祭後)第一主日と8週間後の第九主日では、八調經の参照箇所は同じになります。 Bのサイクルは一年間続き、パスハでリセットされる。そのため、BとCの組み合わせについては「五旬經」では毎年同じですが、「三歌齋經」では毎年異なります。
このため、Aとそれ以外の組み合わせを一冊の式次第で作成するだけならずっと使えるものが出来るのですが、B、C、Dを一冊にしようとすると毎年作り直さなければなりません。(※)利便性と経済性を鑑み、このサイトでは大齋以外はAとBの組み合わせ、大齋、復活祭期にはAとCの組み合わせで一冊としています。祭日はAとDの組み合わせです。
(※)例えば教団発行の「大齋第一週間奉事式略」の早課の聖三者讚詞は第一調に固定されていますが、本来はその週が八調で何調になるかによって変るものです。

★「本調」「同調」「自調」について
「本調」とは、B(八調經)におけるその週の調のことです。その直前の主日が何調であったかを確かめ、八調經のその調から該当する曜日の箇所を探します。
「同調」と言う場合はその直前の指定と同じということです。ただし、実際にはスティヒラの省略が頻繁に行われます。省略があった場合、本来歌うべきだった箇所を考慮に入れるべきだろうと思います。
「自調」は八調のメロディに当てはまらない、その祈祷文独自のメロディという意味。

★指定された箇所が見つからない場合
日本正教会は「月課經(ミネヤ)」の日本語訳を持っていません。ですので、三歌齋經中で「月課經の・・・」とある場合は省略するか、八調經の同種のものから借用することになります。
例えば三歌齋經によると大齋第一週月曜日の晩課「主よ爾に呼ぶ」の讃詞には6句を立てよとあり、3句は三歌齋經にあります(イオシフの作2句、フェオドルストゥディトの作1句)。あとの3句は月課經が指定されており、生神女讃詞も同じく月課經のものを用いるのが本来です(モスクワ総主教庁の奉事表を見るとそうなっています)。
日本正教会が出している「大齋第一週間奉事式略」を見ると、ここでは三歌齋經にある3句だけが掲載されており、続く生神女讃詞は「本調の」と指定されています。本調というのは八調經のその週(土曜日の晩課から変わる)の調ということです。例えば2020年の大齋前の乾酪の主日の調は第4調ですので、2020年の大齋第一週月曜日のこの箇所では八調經から第四調の月曜日の晩課の生神女讃詞「純潔なる少女よ、我に中心よりの涙、内情よりの歎息・・・」を第四調のメロディで歌うことを想定していると思います。
ただ、日本正教会では主日以外の楽譜は殆ど作られていません(正教会の八調のシステムに従って上げ下げの位置だけ決め、歌えば良いだけなのですが)ので、その調の主日の生神女讃詞を歌うようにしている教会が多いのではないかと思います。
実際には、もし外国語の月課經を持っているならそれを歌うなり読むなりすれば良いでしょうし、八調經のその調の生神女讃詞を歌っても良いし、読んでも良いだろうと思います。主日のものを用いる場合は歌うことを優先してそうしているのでしょうから、それはそれで良いのではないかと思います。

★三歌齋經などの祈祷書では、同じような注意は二回目以降省略される傾向があります。たとえば大齋第一週間水曜日の先備聖体礼儀の箇所に、もし先備聖体礼儀を行わないのであれば、晩課の句挿スティヒラ(先備聖体礼儀では行わない)には三歌齋經の自調の讃詞を2回、加えて致命者讃詞、同調の生神女讃詞を歌って通常の晩課と同じように行いなさいとあります。ですので、第二週以降で先備聖体礼儀ができる日にこれを執行しない場合も同様にすれば良いわけです。同じように、家庭で大齋平日祈祷をしたいと思う場合、水金曜日の晩課はそのようにします。
「大齋第一週奉事式略」は非常にわかりやすく便利な本ですが、三歌齋經にある注意書きが全て書かれているわけでないので、そのまま第二週以降に三歌齋經を用いて祈祷をしようとすると戸惑うことが多いのです。三歌齋經の第一週の注意書きを読んでいくと合点のいくことが多いです。

★楽譜が無い場合どうしたら良いか
必ず「調」の指定があります。これは飾りではありません。その調で歌いなさいということです。マリヤ松島師の「聖歌の基本」で八調の歌い方を学んでください。正教会聖歌を「楽譜が無いので歌えません」と言うのは「お皿や箸が無いのでおにぎりが食べられません」と言うのと同じことです。
ただし、普通に読んでも全く構いません。正教会聖歌はあくまでも祈祷文が主、メロディは従です。歌うことで却って祈祷文を味わうことが困難になるくらいなら、普通に読んだ方が良いです。
★楽譜が無い場合、またはあるけれども歌うことが難しい場合の工夫をマリヤ松島師が動画サイトYouTubeにアップした「棒読みのススメ」という番組で教示されております。視聴をお勧めします。

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